協会便り    2020.12月号

   追悼 ジュリアン・ブリームⅡ」(現代ギター10月号参照)

 

12月号までは、「ジュリアン・ブリームの音楽人生とその功績」について「現代ギター10月号」を参照にしながら紹介していきたい。

 ブリームの偉大な功績として、サバの言葉が印象的である。

 

『ジュリアン・ブリームが音楽に対して示した尽きることのない献身と深い愛情、そして音楽家としてギターとリュートで芸術を表現する道を選んだことに、我々は心から感謝しなければならない。彼は多数の作品を委嘱し、校訂者、編集者として精力的な仕事をこなし、クラッシックギターのレパートリーを想像の域を超えて拡大させた。また、演奏者としても・・・我々に膨大な遺産を遺してくれたのである。』テレーズ・ワリシー・サバ  

 

『アンドレス・セゴビアは国際的に有名な演奏家であり、多くの作曲家にギターのための作品を依頼し、彼らにインスピレーションを与え、ギターの可能性をより高いレベルにまで押し上げることに成功した。ジュリアン・ブリームもまた、セゴビアに匹敵するだけの功績をギター界にもたらしたと言えよう。』テレーズ・ワリシー・サバ  

 

 その功績に関しては世界のセゴビアに匹敵するほどの功績を遺したブリーム。その演奏スタイルは、セゴビアと対照的な印象を与えたとある。『例えば、映像に残っているセゴビアの演奏を見ると、圧倒的な存在感を放つと共に、それとは対照的に繊細な音楽性をもうかがい知ることができる。その大きな手は完璧に機能しており、いとも容易く演奏を行っているように見えるし、強固な自尊心と自信に裏打ちされた演奏は威風堂々たる大家の風格を醸し出している。

それに対して、ブリームの映像からは、時には神経質な表情を浮かべたり、額から大量の汗がしたたり落ちたりと、彼が音楽を作るために非常に苦労していることが伺われる。彼の爪は恵まれたものではなかったが、より高い表現力を得るためにリスクを冒してでも演奏していた。そのリスクはミスにつながることもあったに違いない。でも、我々を含むすべての聴衆は、そうしたブリームを心から愛し、尊敬したのだテレーズ・ワリシー・サバ

 

 サバの記事は、演奏家としての弱点でさえも隠すことをせず、むしろ人としての強みにしてしまう彼の愛すべき人柄について余すところなく語っている。聴衆を一瞬たりとも退屈させない心意気と演奏におけるブリームの質の高いパフォーマンスは、彼の不断の向上心と強固な意志による賜物と言えるだろう。また、聴衆との意思の疎通や感動の共感と共に、彼が大事にしたことは「挑戦すること」であったという。

 

最後は、ジョン・ミルズの回想からである。

『彼は私に・・・・聴衆を楽しませるだけでなく挑戦することも必要だ、もっと芸術性の高い作品を弾くように勧めた。その際、聴衆の理解を助けるために、これから演奏する曲の解説を口頭で述べるのは大事だ』ジョン・ミルズ

 ミルズの記事からは、「ギターで芸術を表現する」道を選んだブリームのまさに「譲れない信念」が伝わってくる。

                       2020.12.01

                                                                         吉本光男