協会便り 2017年7月号
「アジア国際ギターフェスティバル」を終えて
先月の8日から11日までバンコクで開催された
「Asia International Guitar Festival and Competition」に行ってきた。今回はちょうど10年ぶりの参加であった。出かける前の関心事は、フランスのギタリストGerard Abiton と韓国のギター製作家 Young Seo との出会いであったが、現実には多くの他国の人々との出会いの中で、たくさんの気づきをもらった。音楽づくりにおいて求める思いがあれば常に、どんな出会いからでも学べるということだろう。内容的にはコンクール、コンサート、マスタークラス、ギター出展会の開催である。
私の仕事はコンクールの予選と本選の審査、および演奏をすることであった。9日の私のコンサートでは聴衆の真剣な眼差しを感じながらの45分間であったが、心地よい緊張感の中で自分らしい演奏ができた。記憶を手繰り寄せたばかりだったバリオスの「郷愁のショーロ」も気持ちに乗せて弾くことができ、今後の大きな収穫となった。コンサートが終わると親指を立てながら満面の笑顔でサインを示してくれた聴衆の方々もいて、嬉しい気持ちになった。
会場に展示されたギターの出展はドイツ、韓国、日本、タイからのものであった。各国のギター製作最新情報など興味深い話を聞くことができた。コンクール予選では20名の挑戦者の演奏を、5時間かけて聴き7名の合格者を選んだ。
本選では1位優勝者はチリの青年であった。私も彼を1位に選んだ。ただ大きな音でしっかり弾いている奏者が多いなかで、まずは音色を大事に、そしてつい前のめりになって聴いてしまうような演奏であったからだ。ギターの一番の魅力、それはまさしく音色。その音色が決して悪いわけではないが、魅力を感じる音を求める心を持って欲しいものだ。音量や速さばかりに気を取られないように、と審査員席で一人つぶやいていた。
今回のFestivalへの参加で新しい出会いがあり、そこから新しい企画が生まれた。私の中のギター地熱は大いに刺激され新しい企画への意欲もわいてきた。旅の疲れは残ったが心地良い。
2017.07.01
吉本光男