協会便り    2017年5月号

          「レオン・クーデラックコンサート

     盛会に終わる

 

4月23日(日)に行われた「レオン・クーデラック コンサート」は、70名を超える聴衆と共に大盛況の中で幕を閉じた。

 

今回、コンサート開演宣言の直前になって同行者のワラテープさんは2部で2重奏のみの出演予定であったが「ワラテープ独奏」という思いがけない展開に遭遇した。クーデラックの体調に合わせて、プロデューサー兼ギタリストでもあるワラテープの機転の判断だったのだという。コンサートでは、プログラムの曲目変更はよくあることだ。しかし、演奏者の変更など聞いたこともない突然の事態に、主催者としてはもちろん、会場の皆さんにも驚きや戸惑いの表情が浮かんだのは仕方のないことであった。だが、二人三脚で世界中を飛び回っている最強コンビにとっては“あるあるケース”の一つだったのであろうか、第1部をあっという間にワラテープ色に染めあげたワラテープの演奏はもとより、その精神力と人間力の高さに感動した。強い信頼関係で結ばれたコンビだけに許される珍しい展開ではあったが、主催者側としては、予定外の解説を取り入れ、以心伝心・超綱渡り的な連係プレーで1部を乗りきることができた。ハプニングを感動に変えることができたのは、もちろん聴衆の皆さんの温かい拍手のお陰があるのだが、ワラテープの人間力によるところが大きい。ギター演奏に限らず、楽器の演奏はデリケートな面が多く「突然」に対応しにくいところがある。クーデラックに最高の調子で演奏をしてもらうための苦肉の策とはいえ、なかなかできることではない。同じギタリストとして、その内面の在り様に深く感銘を受けた。

 

第2部は、クーデラックの独奏と二重奏で予定通りのプログラムに戻った。クーデラックの独奏では、お騒がせのお詫びの気持ちからであろうか、ピアソラの曲が2つプラスされた。世界のギター界を牽引しながら走り続けるクーデラックの演奏は、表情豊かでナイーブ。技術を超えた「心」が紡ぐその音楽の世界は、『後に続く者の憧れになりたい』という彼の思いが十分に伝わる素晴らしいものであった。

 

 最後のプログラムである二重奏は圧巻で、聴衆を歓喜の渦に巻き込んだ。二人の楽しそうな雰囲気から伝わる音楽への思いは、そこに居合わせ者たちへの祝福でもあるかのようで、聴く者の心を奮い立たせてくれる幸せのエネルギーに満ちていた。原始の時代から人々の心奥深く営々と受け継がれてきた「音楽への喜びの世界」が、確かな姿でそこに在った。

 

 今回は、大小様々なハプニングが連鎖的に起こりスタッフを慌てさせた。そんな中にあって、これほど感動あるコンサートにできたのは、不思議な力、大いなるものに応援されている気がしてならい。協会の活動を応援していただいたすべての関係者、来場していただいたすべての方々に心からの感謝を申し上げたい。

                         2017.05.01

                          吉本光男