協会便り 平成28年2月号
「好き」に浸る
「苦しいときは私の背中を見て!」女子サッカー「なでしこジャパン」で輝かしい業績を残し、昨年惜しまれながら勇退した澤穂希選手の言葉である。なんとあっぱれな言葉かと感心する。
彼女の言う「私の背中」は、シュートを決め、グランドで風を切って走るかっこいい姿ばかりではない。悔しさにこぶしを握りしめうつむく背中の時もあっただろう。負けてグランドに突っ伏す惨めな背中の時も、あったに違いない。それでも、それを承知で彼女は、共に戦う仲間に向かって言うのだ。「苦しい時は私の背中を見て!」そのゆるぎない言葉の裏には、どんなものにも屈しなかった折れない心と強い信念が見てとれる。目標に向かって弛まぬ努力をし続けた者だけが発することのできる誇らしい言葉だ。
それは彼女が、サッカーという「好き」に出合い、多くの人に支えられながら、大好きなサッカーに「どっぷりつかる」確かな時間を持ったからだと言える。何事かをなしていくには、「好きなことにどっぷりつかる」時間・時期が必要不可欠だと思っている。というより、好きでたまらないから「どっぷりつかってしまう」と言った方がいいのかもしれない。それほどの「好き」に出合えたことこそが、彼女の人生の宝と言えるだろう。
振り返って、「日本ユニバーサルギター協会」を思う。ギター好きが高じて本協会を設立。皆様に愛されながら2年目を迎えている。
今年も、プロの演奏家として真摯に生きてきた「自分の背中」に誇りを持ち、挑戦し続けていくつもりである。まだ小さな音楽広場ではあるが
真にクラシックギターの文化を世界に発信できる協会にしていこうという志は揺るがない。
私自身、好きなギターに「どっぷりつかった”夢追い人”」の段階から、今は「心のままに弾いたメロディーに浸かり切る演奏」ができるようになってきている。新しい感覚である。
昨年、ギターの「上達コラム」と「感性を磨く会」との関係について述べたが、両者は深くかかわりながらJUGAの活動を支えている。
これまで、「感性を磨く会」では、各界で活躍しておられる方々のお話を聴くことで心を深めていくことを目標に活動してきた。今後も、もちろん、その路線は大切にしたい。しかし今年は、私自身のギター演奏を提供する「感性を磨く会」も企画していこうと考えている。
まずは、5月の「感性を磨く会」でライブのサロンコンサートを開催しクラシックギターの魅力を人々の心に発信していくつもりである。
今年も、ギター演奏家、クラシックギターファン、ギター愛好家が共に繋がり、豊かな時間を共有できる豊かな音楽広場をワクワクしながら作っていきたい。
2016.02.01
吉本光男