ギター上達コラム
第8回 超スロー練習の必要性
第7回ギター上達コラムでは、偉大なピアニストやヴァイオリニストの言葉を引用して超スロー練習についての考察であった。今月はその必要性と具体的な練習への取り組み方について話を進めてみよう。
まず、なぜ「超スロー練習」にこだわるのか。それは、半世紀に亘ってギターに携わってきた私自身が「超スロー練習法」はギター上達には必要不可欠でありしかも、最も効果的な練習法であると強く実感しているからである。
「例え話」をする。
自転車に初めて乗る場合、誰でも初めは恐る恐るの練習になる。だから、ゆっくりなどと言わなくても「ゆっくり」「ふらふら」しながらしか乗ることができない。しかし、ある程度乗れるようになると速さが体感バランスを整え、スピードを楽しめるようになる。そうなってからわざわざスローで乗る練習をする人はいないだろう。超スローの乗り方は、ある程度スピードを出して乗るよりよほど難しいし、また、その必要性も感じないからである。
だがもし、本格的に自転車を乗りこなしたいなら「超スロー練習法」が必要だ。超スローで乗ることで自分と部分、自分と全体それぞれの関連性がよく解ってくるし、自転車が持つ様々な機能を肌でつぶさに感じ取ることが出来るからである。この場合、単にスローではなく、超スロー<普段の速さの3倍~4倍の時間をかける>でなければ意味がない。超スローで乗っても「ふらふら」せず、美しいフォームでバランスよく乗れてこそ達人という名に相応しい。
少々「例え」が長くなったが、ギターの場合も同じことが言える。重要なことは、弾けない段階でのスローではなく、弾けるようになってからの「超スロー練習法」が大事であるということである。これは一過性のものではなく、ギターに関わっている限り、一生続けたい練習法である。ギターの上達のためにはそれほど大事であり、欠かすことのできない優れた練習法であるということだ。
その練習法への具体的な取り組みについて、大事なことを3つ述べる。
まずは、その重要性を素直に受け入れることである。なるほど!と思わなければ
人は前に進まないものだ。
2つ目は、とにかくやってみることだ。行動のないところに実りはない。やってみると解るがスローに「超」がつくのだから自分の出す音がよく聴こえてくる。私はこの練習法によって、音と音の繋がりと指の運びの関連性、関連性よって成り立つ音符の並びかたが謳う協和への畏敬、意識したタッチによって無限に広がる音色の世界等々。驚くほど多くの気づきを頂いた。
そして最後3つ目。毎日10分でもいいから、1回は「超スロー練習法」を取り入れそれを継続していくことである。実際にやってみた人にしか解らない面白さを実感し味をしめて頂きたい。「安定した演奏」「バランスのよい音粒の獲得」は、あなたのギター人生を必ずや豊かなものにしてくれるだろう。
2015.05.01
吉本光男