ギター上達コラム

     第86回 「瞑想する」

 

 まだ腱鞘炎を抱えながらではあるが、今、「AlbumⅤ」の「朱色の塔」に向けて細部を見直す作業に入っている。「朱色の塔」は40代の頃に徹底的に追求した曲である。今になってみると演奏技術と共に「曲の深み、彩り、広がり」を表現するという意味において、まだまだ未熟だったことに気づかされる。「上達コラム」4月号でも書いたことだが、想いを明確に表現するにはイメージと共に、自分の「呼吸」をコントロールすることが重要となる。普段の生活において呼吸を意識することはあまりないが、演奏においては意識した深い呼吸が必須である。今月のコラムは、日常のなかで私が実践している小さな「瞑想」についての話である。

 

毎日、一定時間「瞑想」を続けることで深い呼吸を意識し「息を整えることに集中する時間を持つ」というのがそれである。勿論、「瞑想」といっても入門編なので目を閉じてリラックスし、軽く膝で手を組みながら集中して「深い息の出と入りを意識する」「浮かんでくる心のあり様を観察する」というだけの簡単なものである。正式な方法でやってみたい方には、書店で「瞑想」に関する本を買って研究するか、「瞑想教室」に通うことをお勧めするが、そこまでいかなくても意識して呼吸を整え、数分間「瞑想する」時間を持つだけで日常にちょっとした嬉しい変化が生じている。私の場合、一回の時間を3分間と決めて今年の5月半ばからスタートした。3分間の「瞑想」から始め、効果を見定めながら1分間ずつ伸ばしていくという、かなり「ゆるい取り組み」である。

今月からは5分間の「瞑想」を実践している。私にとって5分間の「瞑想」は結構長い。しかし、今では精神修養のための大切な時間になっている。

 

 さて、「上達コラム」である。

「ギター上達」と「瞑想」との間に、どんな関係があるのか。即答とまではいかないが、「間接的相乗効果」と答えよう。「瞑想」の持つ効用について調べれば様々あるとは思う。だが、私自身が日々実践していく中で大きく変わったと実感していることは、一つには健康への効用である。「瞑想」が日常生活の中である程度定着すると、演奏時の呼吸をコントロールできるだけでなく、普段の呼吸までが深くなっていることに気づかされる。これまでの呼吸がいかに浅いものであったかということになるが、深い呼吸は全身の気の巡りを整えてくれるようだ。

 

最近は、気づいたときに意識的に深呼吸を取り入れるようになった。深い呼吸を腹に深く落とし込むことで新鮮な空気が体中にいきわたる感覚がある。ちょっとした身体の不調は、この深い呼吸を数分間取り込むことで日常的に改善されていく感覚がある。つまり、ストレートに「ギター上達」の為というより、健康という心身の状態を通して集中力が高まり、そのことが「ギター上達」に繫がっているということだ。

間接的ではあっても、その効果は大きい。「瞑想」がもたらす健康利息が「ギター上達」に大いに貢献しているという事実は、最近の中ではかなり愉快な発見である。まだやっていない人は、ぜひ挑戦してみることをお勧めしたい。

                          2021.11.01

                                                 吉本光男