上達コラム
第85回 「早起きは 三文の得」
「真夜中のギター」という歌が一世を風靡した時代があった。シンガーソングライターの加藤登紀子がしみじみ歌っていたのを懐かしく思い出す。ギターの最大の魅力でもある哀愁を帯びた深い音色は、真夜中のしんとした静寂さの中で弾くと胸に染みて味わい深い。彼女の歌の影響というわけではないが、仕事の関係で自分の練習時間は夜遅くになることが多く、為に自然に「真夜中のギター」を弾くことになっていたのだが、夜中の方が集中できるのでつい最近まで自分の練習は夜遅くから始めることが常であった。
最近、夜型だった私が「早寝・早起き」を心がけている。体力的な問題もあって早い時間の練習に切り替えると決めたからである。明け方に寝て、大抵は昼過ぎに起きるという生活を続けてきた身にはかなり厳しいが、それでも早起きに慣れてくると実に気持ちがいい。朝日を浴びながら朝食を頂くので1日のスタートが清々しい。早起きを心賭けてみると、いい事ばかりで今までの習慣は何だったのかと思ってしまう。早起きをするようになって「よくなったこと」を挙げてみよう。
① 頭すっきりして、朝食がうまい。
② 午前中が長く感じられ、有効に使える。
③ 練習時間の確保が容易になった。
④ ウォーキングの時間が取れるようになり健康的である。
⑤ お昼が美味しくいただける。
⑥ 昼寝ができ、夕方からの仕事時間も体が軽く感じる。
⑦ 教室で過ごす時間が増え、必然部屋を快適な空間にしようと心掛けるようになった。
⑧ 家族との会話が増えた。
⑨ 夜の間食がなくなり体重が減った。(これはよく噛んで食べるという習慣の賜物でもある)
⑩ 熟睡できるようになった。 等々
① から⑩までの項目は全て、「新たな意欲」に繫がる健康要素となっていることに驚く。
自身の演奏技術や表現力をどこまでも追求したいという心の高揚感は年々増幅していくばかりだ。数々の先人たちが、歳月をかけて培ってきたクラッシックギターの無限の可能性を身の内で深め、究めていきたいと願う気持ちも強くなる一方である。だが、年齢を重ねるにしたがって基本の練習はもとより、「コツコツと小さな一歩を積み重ねていく」気力や体力をどう保っていくか。すべては、自身の「健康な心身」をいかに日常的に保っていくかにかかってくる。
「早起きは 三文の得!」とは言い得て妙である。普段の健康維持に役立つことはもとより、「ギター上達」にも深く関係し相乗効果がある。「AlbumⅤ」も、ギターの持つ可能性をさらに追求していくための一つの通過点。「錆びない心」で前進していくためにも、「習慣を変える」という難題に本気・本腰で取り組むことを真面目に考えている。
2021.10.01
吉本光男