ギター上達コラム

      第71回 「幸運な人」

 

例年であれば、日本の子どもたちは7月後半から待望の長期休暇・夏休みに入るはずであった。だが、長期にわたった「生活の非日常化」というコロナ自粛の影響で、夏休みも今月8月5日〜19日までの2週間だけだという。子どもたち嘆きの吐息が聴こえるようだ。

 

大人である我々の暮らしもまた、経済活動と共に見える形で影響を受けている。これまでの生き方を大きく変えざるを得ない状況に居ることでは子どもたち同様シビアである。だが、どんなに状況が変わろうと決して変わらないものがある。心の奥底でふつふつと湧き上がる情熱。「好き」に裏付けされた揺るぎない熱量は、増えることはあっても減る事はない。自身のギター道を極め、聴く人の心に感動と生きる勇気を伝えていきたいという夢はまだ道半ば。周りの状況がどうあろうと、私の日常を形作っているギターへの情熱が薄れるということはない。

 

「Stay Home」の中に在って、「ソロAlbumⅤ」の収録曲目が決める

 ことができた。

 

① アルハンブラの思い出 (タレガ) ②小組曲 (バカリッセ)         

③ 序奏とロンド (アグアド)   ④セビーリャ (アルベニス)           

⑤ 朱色の塔 (アルベニス) ⑥アストゥーアス (アルベニス)        

⑦ 入り江のざわめき(アルベニス ⑧マジョルカ (アルベニス)        

⑨ パバーナカプリオ(アルベニス ⑩ゴヤの美女 (グラナドス)          

⑪スペイン舞曲No.5 (グラナドス)⑫禁じられた遊び(アントニオ

                        ルビーラ) 

⑬スペインセレナーデ(フェレール)⑭スペインセレナーデ

                       (マラッツ)

             

時間的に少し精選する必要はあるが、決めたことで迷いがなくなり収録に向けて前進する大きなエネルギーになった気がしている。最近の音楽機器の発展は目覚ましいものがあり、時代の流れ中でCDアルバムの需要は年々減っていく運命にある。だが、「売れる」or「売れない」という思いを超越して、生涯をギター道に邁進してきた者の生きた証としての「記念のアルバム」である。道楽と言われれば反論のしようもないが、好きなギターに生涯をかけてこられたことへの感謝の気持ちを込めて、「AlbumⅥ」までは諦めずに挑戦していくつもりである。

 

「AlbumⅤ」はスペイン編。「AlbumⅥ」はバロック編と考えて今を行動している。これまで、様々なことに挑戦することで経験値としての「上達コラム」が生まれ現在に至っている。会員の方々に、少しでも役立てて頂けているのであれば嬉しく思う。

「AlbumⅤ」では、今まで私の守備範囲にはなかった新曲にも挑戦するつもりで準備している。②のバカリッセである。昔から弾きたい曲として候補には上がっていたが、難曲ゆえについつい後回しにしてきた曲だ。今回、不退転の覚悟で真剣に向き合ってみて、その素晴らしさをあらためて実感している。皆様にお届けできる日を私自身も楽しみにしている。私の場合、「AlbumⅤ」作成に向けて小さな決意を一つ一つ積み上げていくことが、とりもなおさず上達への確実な手応えになっている。できれば、設定した目標に挑戦し、自分自身の手応えとして実感をもって学んでいただければ幸いである。

 

何よりも「好き」であればこそ続いてきた道である。人生の中で「好き」に出会った者は、それだけで幸運な人なのだという。このコラムを読んでいる人は、人生の中で掴みとった「好き」を離さなかったという意味において、まさに幸運な人と言えるのだろう。

                        2020.08.01

                                                  吉本光男