ギター上達コラム

    第70回  「前へ! 今がその時!

 

コロナウイルスの長期化がもたらしている社会不安が解除されるには、まだまだ時間がかかりそうだ。コロナ不況の波をもろに被り、心ならずも生活が困難となってしまっている人たちのニュースが流れてくる度に心が痛む。新しい生活習慣として定着しつつある「3密を避ける」「手洗いの励行」「マスクの着用」を継続しながら、一日も早く安心の日常が戻ってくることを心から願っている。

 

 

バカリッセの「間奏曲」は、5曲からなる小組曲の中の1曲だ。若い頃から、ずっと弾きたいと熱望していた曲で楽譜だけは保管してあったが、そのこと自体すっかり忘れてしまっていた。ところが、コロナによる長い「Stay Home」で、棚の奥に押しやられたままになっていた沢山の楽譜を整理している時、それらの中に埋もれていた「間奏曲」を発見したのだ。黄ばんで年代物になってしまった楽譜を嬉しく手に取りながら、しばし、懐かしい思いに時が流れた。

 

早速、楽譜に目を通し弾いてみる。いいものはいい。一つのパッセージを弾くだけで至福の時間が流れる。つくづくと楽譜の全体を眺めているうちに、諦めてしまっていた苦い経験と共に、再びあの頃の熱い思いがこみ上げてきた。今こそ やらねば!強い気持ちに押されるように、一つの思いが湧き上がる。この小組曲を「ソロAlbumⅤ」に入れることにしよう!不退転の覚悟が生まれた瞬間である。

 

今であれば、自分でもグッとくるような納得のいくものに仕上げられそうだ。胸の奥で、つぶやく自分がいた。「前へ!思い立った今が その時!」それは、Twitterを半年間続けていく中で少しずつ変化し刻まれた新しい心境でもある。突然現れた「積年の熱望」の前に湧き上がった、「今の決意」である。昔、技術が伴わず手のうちに入らなかった曲でありながらも諦め切れなかった曲だ。今は、がっぷり四つに組んで「何がなんでも最後までやり抜く覚悟」で取り組んでいく気になっている。偶然すぎるこの再会に身が震える思いである。

 

人は、生きていく中で時折このような素晴らしい偶然に出会うものなのだろう。このような好機を逃す手はない。どんなに苦しくても、今度こそはものにするまで絶対に諦めないという気概を持って取り組んでいる。心に「何としてもやり遂げたい」願いがある。それだけで、人生は輝きを増す。バカリッセの小組曲全てを手の内に入れるまでには、多くの時間と努力を要することだろう。だが、そこに向かって迷うことなく邁進できる時間と情熱が持てることの何と嬉しい事であろうか。

 

今年1月、Twitterに挑戦したときは、「ギター愛好家の方々にギター演奏の実際を提供することで何かしらお役に立てれば・・」という軽い気持ちでスタートした。しかし、今になって思う。この挑戦によって私もまた、途方もなく大きなGiftを頂いていたのだ。

次の「ソロAlbumⅤ」が完成するのはまだ先のことになるが、心を燃やし続けることができる曲に再会できた幸せに、心から感謝している。

皆さまと共に歩く「日本ユニバーサルギター協会」。活動開始までには

暫く時間がかかるだろう。新しい挑戦を続けながら共に高みを目指して一歩一歩と歩いて行こう。

                                  2020.07.01

                                                                          吉本光男