ギター上達コラム
第68回 「思いをのせる」 ために
コロナウイルスによる「緊急事態宣言」は長期戦になりそうだ。目に見えない強敵との闘いである。気持ちが疲弊しないよう、毎日の過ごし方に新たな工夫が求められている。学校関係も「休校」を延期、収束はなかなか見えてこないがが、「Stay Home」「手洗いの励行」を徹底し気持ちを落とさないようにしていきたいものだ。そんな中、ツイッターでは「2分20秒以内に収まる小品」のupを1週間おきに実行していた。
ギター愛好者の方々の演奏に少しでもお役に立てればという気持ちがある。4か月近く続けてきて、最近はワンポイントの解説をつけたりしながらツイートしている。
「演奏に関わってくる技術」に対して、小さな解説を入れることで「より良い演奏を意識した練習」ができるのではないかと思ったからである。これまでに9曲の小品をupしてきた。upした演奏の中から自分の力量で「自由に欲しい情報をくみ取っていただく」というコンセプトの中で行ってきたつもりである。だから、「運指」「タッチ」「指の離し方」「音色の違い」などが見ていて分かるように、左右の指の動きがはっきりするようにズームした映像になっている。しかし、演奏の映像だけでは届けたい情報が漠然としていて限界を感じていた。
勿論、「曲を楽しむ」という観方をしていただけているのであれば、それはそれで嬉しい事である。しかし、できることなら、掴んで欲しい情報を正確に受け取ってもらえたらもっと嬉しい。そこで、もう少し技術的なものもキャッチし易い形で届けられないかと考えた結果、時々は「演奏技術の解説を入れる」という形式をとることにした。中級、上級の演奏になってくると、底辺を成す基本の技術が大きく影響してくる。基本が正しくできていないと「演奏に思いをのせる」ことはできないからである。よい演奏と感じる時、そこには必ず「演奏者の思いがのっている」ものだ。若い頃から「思いをのせる」表現方法を探し求め、長い道のりをもがいてきた。だが、演奏技術が伴わず、そのことの難しさを痛感させられることが多かった。まさに、「思いをのせるため」には、技術の上達は必須なのである。
言葉だけでは難しい演奏技術の伝達も、「ツイッター」であれば映像と共に届けられる。言葉と映像を同時に見ることができるという利点である。「演奏技術」は、勿論これまでに私が培ってきた「吉本流」である。技術の獲得には様々なやり方があるので、他を否定するつもりはない。私には「これが一番合う」という提言であって、強制するつもりは全くない。Upする行為自体は、私自身の学びにもなっている。必要と感じた人が、必要な部分をチョイスし、お互いに楽しくやっていけたらそれが一番だと考えている。
今後は、小品の紹介と同時に「ギターの持ち方」「和音」「ビブラート」「ポジションの移動」「爪の事」など、必要に応じて解説の発信もしていきたいと思っている。できれば、観ただけで終わるのではなく繰り返し、繰り返しやってみて体にしみ込ませていってほしい。必ずや「あなたの演奏があなた自身を癒してくれる」ような演奏に変わっていくはずである。紙面による「上達コラム」とコラボさせながら、皆さんのよりよいギター演奏のために少しでも役立てていただければ幸いである。
2020.05.01
吉本光男