ギター上達コラム

        第42回   「 赤枠囲い込み作戦 」

 

気になっている楽曲に挑戦したいと思うのに、楽譜を前になかなか気持ちが乗らないということはないだろうか。初級や中級位の練習曲であれば、1日分の小フレーズ毎に日付を付ける「音符貯金」のやり方がある。この「音符貯金」のやり方は、毎日の部分練習の後、必ず最初から弾きなおすので暗譜する場合にも効果的で、毎日の練習を楽しくする方法として以前コラムでも紹介したことがある。

 

今回は、6ページを超えるような曲の場合で、取り掛かるのにちょっとした壁を感じる場合の対処法である。今、取り掛かっている曲にアグアドの「序奏とロンド」がある。前々から“ものにしたい”と温めていた曲である。これまで、この曲はJ.ブリームの名演奏がいつも頭から離れず、そのことが壁になって挑戦する気持ちにブレーキがかかっていたように思う。だが今年、「楽譜再考」を進めていく中で次第に気持ちが乗り、いよいよ機が熟した感がある。今月号では、上記の「序奏とロンド」を念頭に置きながら「赤枠囲い込み作戦」について詳しく書いてみよう。

 

       【囲い込み作戦 手順と心得】

① 楽譜全体を眺め、部分をじっくり読み込みながら、無駄のない指使いを決める。

・無理のない指使いを工夫する。

② 楽譜を小さなブロックに分けて赤い線で囲っていく。

・囲い込みのブロックは自分のやりやすい長さでよい。あまり長くならない方が負担にならず、確実に前に進むので足踏みが少なくなる。私の場合は「序奏とロンド」は全部で30ブロックになった。

③ ブロックに番号を付け、好きなところから攻めていく。

・前から順番に弾いていく必要はない。好きなフレーズから攻めていくとやる気になる。苦手な部分は、ブロックのなかに先の「音符貯金」形式を取り入れ日付を付けて攻めていくのも良い方法だ。

④ 一つのブロックがスムーズに流れるようになったら次のブロックにいく。これを繰り返し、ブロックの全てが手のうちに入るまで続けていく。

・先に手がけたブロックは必ず反復復習する。ブロックごとに攻めているので曲としてのつながりはないが、体に記憶させるために何度も何度も繰り返すことが大事だ。この練習は「ゆっくり」「スロー・スロー」が基本である。

⑤ 暗譜する。

・①~⑤でも暗譜は進んでいくが暗譜に「意識を集中させる時間」が必要である。

⑥ 曲想を練る。(①と並行しても行うが、本格的にやるのはこの段階)

・技術的な問題がクリアされ曲全体がスムーズに流れるようになったら、ようやくスタートに立ったことになる。ギターの場合、ここまでの努力が半端ないだけに⑤で満足してしまうことが多い。まことにもったいない話である。

このやり方の特徴は、時間はかかるが確実に前に進むということだ。ブロックに分けることで音符の量の多さを感じさせないので、どんな大曲にでも挑戦する勇気が出てくる。

                       2018.03.01

                        吉本光男