ギター上達コラム
第49回 イメージする力
物事には順序がある。「準備」があって「本番」がある。本番のない日々の練習は、漫然と「ながら練習」になってしまいがちだ。だが、「本番」が用意されていると、日々の練習は「本番に向けての準備」となり聴衆の面前で演奏している自分をイメージしながら、真剣で中身の濃い練習となる。「日本ユニバーサルギター協会」の行事として、皆さんには3月と9月に「ティーコンサート」が用意されている。(台風接近のため9月は、10月28日に延期となった)挑戦することを決め、目標に向かって日々の練習に精を出してきた人にとっては今月のテーマは、切実感を持って腹に落ちていくことだろう。もちろん、今月のテーマ「イメージする力」は、挑戦した・しなかったに関わらず日々のギター練習における「準備」の一環として身につけておきたい力である。
ギターは、ネックで言うなら僅か「幅5㎝ほどの世界」の中で音楽を表現していく実に繊細な楽器である。演奏中は、気を遣わなければならない事が数限りなく頭の中を駆け巡る。そんなかで、心に届く良い音色や自身が納得できる表現をいかに鮮明にイメージし自分の中に落とし込むことできるか。特に舞台演奏においては、曲全体の流れを「絵を描くようにはっきりとイメージする」力が要求される。スポーツでも芸事でも本物といわれる人は、自分の「ありたい最高の姿」を生き生きとイメージすることで日々の練習の質を高めていくという。では、イメージする力はどのように培っていけばよいのだろうか。以下は、個人的体験をもとにした練習方法ではあるが、参考にしてもらえれば幸いである。
【五感を総動員】 とりあえずは、舞台経験としての実績を積むことが必要だ。経験のないことはイメージできないからである。人前で演奏した時の胸の鼓動、その場の雰囲気、音、臭い、感触など五感を総動員してリアルにイメージすることで、練習時であっても脳が本番の経験をしていると錯覚する。それを続けると舞台での動揺が小さくなる
【スローモーションと反復練習で確認】 イメージする中で、曲の大事な部分はスローモーションで再生し、難しいフレーズはスローでイメージして確認する。成功イメージを反復していくことで、練習の効果が得られるようになってくる。
【毎日5分を継続】 イメージトレーニングを本気で行うと、かなりの集中力が必要になる。トレーニングを長時間・集中的に行うよりも、1日に5分くらいを毎日行う方がよい。繰り返し記憶を喚起することで、よりスムーズにクリアにイメージできるようになってくる。まずは、本番としての「場」を決め、課題曲が確実に弾けるようになることから始めよう。そして、日々の練習の成果を確かめるためにも本番を経験してみよう。イメージする力は、当然のことだが経験を積んでいくほどに明確になってくる。初めは「イメージする」こと自体が漠然としていて掴み切れない感じがするものだ。だが心配することはない。「毎日5分間」を継続していく中で、次第にはっきりと掴めるようになってくる。継続こそが、あなたのギターの世界を輝かせる「こつ」なのだ。「ゆっくりと」がいい。一歩を踏み出す勇気をもち、共に高みを目指していこう。
2018.10.01
吉本光男