上達コラム

         第47回   右脳で弾く

 

今、ポンセの組曲を「ソロアルバム Ⅳ」の録音に向けて仕上げている。組曲の中には暗譜ができていないところもあるので、暗譜に至るまでの練習では、「譜読み」「音符貯金を駆使しての反復繰り返し練習」が延々と続くことになる。繰り返し、繰り返し練習し、音の流れが体にしみ込んでくるまで何度でも「難しいフレーズ」や「本日の日付・囲い込み部分」にトライしていく。やがて、目をつむると頭の中に指の形が次々にイメージとして浮かんでくるようになり、フレーズ毎にどこからでもすぐに滑らかに弾きだすことができるようになる。そこまでくると、暗譜はより確かなものになっていく。

 

これらの反復練習は、技術的なミスタッチや暗譜へのストレスを少なくするための練習であり、どちらかといえば「左脳」を使っているのだという。技術面と暗譜へのストレスが少なくなってくると、今度は「右脳」が働くようになるようだ。

では、「右脳で弾く」とはどういうことなのか。

表現豊かな演奏には「右脳」が関係しており、ムードや感情表現など、音楽表現に気持ちが傾いている場合は右脳の関与が高いと言われている。つまり、ストレスから解放され、リラックスした状態で演奏しているときは右脳がよく働いているというわけだ。聴いていて良い演奏であるときは、「右脳弾き」になっていることになる。

「右脳」と「左脳」について、あらためて調べてみた。

ざっくりとした説明であることを前置きに、次のように書かれていた。

右脳は、表現のイメージをしたり楽器を弾く身体の感覚を感じたりしている部分で、感情や芸術に関する分野を処理する役割がある。』

左脳は、注意を促したり、物事を考えたりしている部分である。演奏に至るまでの譜読みや繰り返しの練習から暗譜までの機械的運動能力を使う過程では、左脳をよく使う。』

 

なるほど、暗譜までの練習過程では主に「左脳」を使っているというわけだ。暗譜ができると、そこから音楽づくりが始まる。暗譜が終わったらその曲はそれでおしまいにしている人は、肝心の「右脳」をあまり使わずに終わってしまっていることになる。実にもったいない話である。右脳も左脳も、鍛えるには使うのが一番だ。特に、豊かな音楽表現に関係が深い「右脳を使う」時間を多くとるには、暗譜や技術面のストレスをできるだけ早めに克服することだ。弾きたい音・音楽のイメージを創りあげることに多くの時間を割くことで脳は、音色を研ぎ澄まし、絵を描くように弾くための「右脳」に集中するようになる。演奏には深い呼吸が不可欠である。右脳トレーニングの基本もまた呼吸にあると書いてある。ここまで読んできたのだから、やってみるしかないだろう。

右脳トレーニングの基本となるのは呼吸です。普段は浅い呼吸をしていますが、それは、左脳呼吸です。右脳呼吸をするためには、意識的にゆっくり、深く息を吸います。その時、息とともに宇宙のエネルギーが全身の皮膚を通して体内に入ってくる、とイメージします。すると、実際に良い波動の宇宙エネルギーが体内に入り込んで、細胞を若返らせます。

                                              2018.08.01

                                                吉本光男