ギター上達コラム
第36回 打つ手は常に無限
どんなに弾きたい曲であっても新しい曲を覚えようとするときは、難所にぶつかり立ち往生することがあるものだ。若い時は、気持ちに技術が追い付かず何ともならないままに放棄してしまった曲も少なからずある。だが、この年齢になると「何とかなる・何とかしたい」気持ちの方が勝つようになってくる。技術的な問題が解消されてきたこともあるが、経験的に“くさらず、あきらめず、徹底的に向き合っているとふっといつの間にか技術が追い付き、弾けるようになっている”ことを体験的に知ったことが大きいようだ。
大事なことは、たとえ小さな曲であっても1つの曲に徹底的に向き合うことである。徹底的に向き合うとは、具体的に言えばどんな行為をいうのだろう。例えば、何か月も継続して弾き続ける根気を持つことである。例えば、楽譜を隅々まで見渡し、思いや考えを深く巡らせ続けることである。それは、曲への愛情を育む力といってもよい。どんなに難しいフレーズにつまずいても、あきらめない貪欲さと呑気さを抱え持ち、弾き続ける情熱を燃やし続ける人だけが「道」を極め、人生をも究めていくのだろう。
この夏、すばらしい「詩」に出会った。皆さんにも紹介したい。
『 すばらしい名画よりも
とてもすてきな宝石よりも
もっともっと大切なものを
私は持っている
どんな時でも
どんな苦しい場合でも
愚痴を言わない
参ったと泣きごとを言わない
何か方法はないだろうか
何か方法はあるはずだ
周囲を見回してみよう
いろんな角度から眺めてみよう
人の知恵も借りてみよう
必ず何とかなるものである
――― なぜなら
打つ手は常に無限であるからだ 』
2017.09.01
吉本光男